8.口移し


本当、夏場の体育って嫌。
だって暑いし、すぐノドが渇くんだもん。

「暑い……」
「そうだな……あっちぃー……」

隣で座っている瞑くんも僕と同意見。
瞑くんとは同じクラスだし、体育は男女混同だから、今はクラスメイトから見えない位置の木の下で一緒に休憩中。

ちなみに授業中だから僕は≪生徒会長モード≫を発動中。
でも……この暑さだといつボロが出てもおかしくないかもってくらい本当に暑い。

「泰、お前今飲み物持ってねぇ?」
「ペットボトルなら」
「いただきっ!」

差し出した僕の手からペットボトルを奪った瞑くんは、キャップを開けて一気に半分飲んだ。

「……ぁっ!」

半分も飲んだ!って文句を言いたいけど、その前に……

「あー……コレって間接キスだよな?」
「……っ!!」

僕が思っている事を瞑くんが言うから恥ずかしくなって顔が赤くなって僕は下を向く。

「なぁに赤くなってるんだよ。……そうだ、俺が口移ししてやろうか?」
「死んじゃえ、バカ」

他の人には聞こえないように小声で言ってついでに足でも踏もうとしたら
いきなり腕を引っ張られてキスされたかと思ったら、僕の口の中にペットボトルの中身のジュースが入ってきて……。
真っ赤な顔をした僕を見た瞑くんはニヤっと笑って体育へ戻っていった。


口の中には、いつもより甘く感じるジュースの味が広がっていた。


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