泰ちゃんと実くんの話
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ドテ。



「う〜…」



また、転んじゃった。
何も無いところなのに、なんで僕は転んじゃうんだろう。
そんな事を考えていると……

「だ、だだ、大丈夫……!?」

少し遠くのほうで声がした。
とっても聞いた事のある声。

「あ…、」

パタパタと向こうから走ってきたのは、とーるちゃんだった。
僕の前でしゃがみこんで、ケガしてないか、僕の足を見ている。

「足、すりむいちゃってるね・・・・・・痛い??」
「ううん、だいじょーぶだよ」

とーるちゃんに心配かけないように、頑張って笑う僕。

本当は足がヒリヒリしてて痛い。
でも泰ちゃんに心配かけたくなくて僕はがまんしてる。

「あ、そうだ〜」
「??」
「ちょっとまってね〜」

そう言ってとーるちゃんは、スカートのポケットの中に手を入れた。
でも、なかなか見つからないのかな?
あれ〜?とか言いながらポケットの中で何かを探してる。

「あった〜!」
「ん??」

「はい、これあげる」

僕の手のひらに置かれたのは、白い包み紙。

あ、これ知ってる。

いちごみるくのキャンディーだ。
よく、とーるちゃんが食べているのを見た事がある。


「コレ食べてたら、痛さとか、ぜーんぶ吹っ飛んじゃうよ!」


……え?

とーるちゃん、本当は気づいてる?
僕が痛いのがまんしてるって。

「とーるちゃん」
「ん?」

何?って笑顔で僕に聞いてくる。


「ううん、なんでもない。ありがと〜」



本当にとーるちゃんはやさしい。


僕は、やさしいとーるちゃんも
みんなの前でカッコよくしているとーるちゃんも


「ねぇ、とーるちゃん」


ぜんぶ、
ぜーんぶ、


「だーいすきだよ〜」



だから、僕の暮らしていた国でする、お礼をさせて?







――Lightly on cheeks a kiss.