真夜ちゃんと部長のお話。
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今日も、明日も、これからも。











放課後になると、部活に連れて行く為にいつもオレはアイツを捕まえる。
…いや、捕まえ『よう』とする。


「真夜」
「げ」


真夜がオレと顔を合わせると最初に言う言葉は必ず「げ」だ。
昨日も言ったし、一昨日も言った。


もはやオレへ対する真夜の『「げ」使用率』は99%を越えているに違いない。
なんて悠長に考えてみる。


「今日こそは部活に出るんだろうなぁ…?」
「…さぁ?」



『さぁ?』
それがスタート合図。



真夜はオレがいる場所とは反対の廊下を一目散に翔けて行く。
それを毎回毎回オレが追いかけるんだが……


「…っ、くそ…アイツどこに行った…?」


決まって追いつけないのが毎回の結末だ。




案の定、今日も真夜を捕まえる事は叶わなかった。


「…はぁ」


オレは溜め息をつく。
これも毎日している気がする。


「大体、真夜を捕まえる事なんて無理だって分かってるんだけどなぁ…」


疲れきってオレは壁を背もたれにして息を整える。

真夜の足は早い。
というか、『早い』というカテゴリに収まらない程、早いのだ。

まともに毎日部活に出て練習していれば、きっと大会とかで良い成績が残せるだろう。
顧問が真夜の走りに惚れていた。…オレも羨ましいと思った事も正直ある。
でも当の本人はそんなのには全くと言って良いほど興味は無いらしい。

好きなように走るのが好きだと。
そんな勝負事なんか興味はないとオレにハッキリ言った事がある。

でも陸上でこの学園に外部特別枠で転校出来たんだから、普通はもっとこう…一応は練習すべきだと思う。

その意見は【陸上部の部長】としてで、オレ個人で考えると実際そんな意見は皆無に近いほど無い。
まぁ…枠に捕われるより自由に走る方が正直アイツに似合ってるしな。

…しかしまぁ、こう毎日練習をサボられると、さすがに顧問の痛い視線が部長のオレへと来るんだ。
あの顧問の真夜の走りの惚れ込みは異常じゃないからなぁ…





お願いだから、それだけは分かってくれよな。真夜…!!