「皇城学園高等部生徒会執行部副会長、内藤恵の名の下…」 いつか本当にありそうで… でも、ありえなくて… でも。 恵なら、いつかやらかしかねねぇなーって思った事も正直ある。 「生徒会会長、北条泰を…」 でも、まさか、 現実に起こるなんて… 誰が想像したよ? 「リコールする」 +本音or…+ 「「…は?」」 いつもの放課後 いつもの生徒会室 いつもの日常 ……って思ってた。 仕事をしていた恵が突然席を立ったかと思えば、 実とあやとりしてた泰の目の前に立ち塞がって、書類を突き付けた。 『リコールする』と、言葉も添えて。 話し声でうるさかった生徒会室が、一気にしてシーンとなったさ。 恵が泰をリコール? は? どういう事? そりゃ、今まで恵が泰をリコールしようとした理由は…数えきれない程あるけどさ。 それは物の弾みの言葉であって、しかも何だかんだ言って泰に甘い恵がまさか本当に泰をリコールしようとするなんて誰が思う? 俺はどうしたらいいのか解らずに、とりあえずシーンと静まりかえった周辺を見渡してみる。 言われた当の本人…泰は言葉を失ってる。 一緒に遊んでいた実は今の状況が何が何なのかわかっちゃいないみたいだ。 妃だって計算手を止めて恵を見てるし、姫は手で口を覆っている。 真夜なんかちょうどクッキーを食べようとしてたのか、手からクッキーが落ちて床に転がっていった。 柏木は花瓶持ったまま立ち止まって驚いた顔で恵を凝視してるし、 高橋はいつもの笑顔はなくなって何やら真剣な顔だ。 何故か生徒会室で言い争いしてた麗姉と夏兄(って学園内で呼ぶと怒るけど)も言葉も無く黙っちゃったし。 「じ…冗談…だよ…ね??」 この沈黙を破ったのは泰だった。 少しだけど泰の声が震えている。 その様子は誰から見ても、本気で恵に怯えていた。 まぁ、何か今の恵からは威圧的オーラが漂っているのは、少し離れた位置にいた俺にも感じ取れるくらいだし。 ……って事は、恵の目の前にいる泰はどんだけ恐怖を味わってるんだろうな。 恵を本気で怒らせたら、多分誰にも止められない。 それは俺と泰は中学の時に経験済みだから、だから余計に今の恵が恐かった。 てか泰が恵を怒らせる事、何かしたっけ…? …ダメだ。 いっぱいあり過ぎて逆にわかんねぇ! 「け…恵くん」 おずおずと泰は恵の名前を呼んだ。 その瞬間、恵はふっと笑って… 「あぁ。冗談だ」 と言って恵は自分の席に戻って、何ごとも無かったかの様に仕事を再開していた。 そんな恵を泰含む俺達はポカンとしながら見ていて。 「ん?どうした??」 今の一連の行動が把握し切れてない俺達がシーンとして恵を見ていると、 当の恵が、逆に俺達に聞いてくる。 やっぱり一瞬の消音。 そして、全員一致の溜め息が続く。 「びっ…びっくりしたぁ……」 そう言って泰はそのまま床へ座りこんでしまった。 腰抜かしたんだな、こりゃあ。 その気持ち、わからなくも無い。 さて、立たせてやりますかね。 と思って、泰の方向へ行こうとした時、 「本当、驚きますよね」 そう言った柏木が「大丈夫ですか?」と俺より先に泰に手を差し延べていた。 泰は「ありがとう〜」と言って柏木の手を掴んで立ち上がる。 あっくそ!柏木てめぇ!俺様の出番が!! 「あぁ…そういえば」 いきなり高橋が喋りだした。 何時戻ったのか、あの胡散臭いいつもの笑顔で。 「泰さん」 「ん〜?なぁに??じいやー」 「問題です。さて、今日は何の日でしょう?」 「・・・え?」 いきなり言われて最初は驚いていた様子だった泰は、すぐ、う〜ん…とか言いながら考え出した。 は? 今日が何の日?? つーか、高橋は何言ってんだ?と思いつつ、俺は壁にあるカレンダーを見た。 今日は…4月…… ……あ。 「1日…」 「今日は俗にいう『エイプリル・フール』…嘘をついてもいい日ですね」 まさか?と思って俺達が恵を見ると、視線に気付いたのか書類を見ていた恵が視線をこっちへと変える。 「何か悪いか?」 いやいやいやいやいやいやいや!! 悪いもなにも……。 あん時の恵は迫力ありすぎなんだよ。 俳優もびっくりな演技賞だっつーの! 「まぁ、この書類は本物だがな」 そう言って、恵はヒラヒラと俺達にさっきの書類を見せる。 つか、本物かよ! 「あと日付と俺の印鑑さえあればいつでもリコール届が理事会に出せる」 「マジ?」 「大マジだ。…だから泰」 「な…何??」 「精々、俺に愛想尽かされない様に生徒会長頑張るんだな」 ニヤリと笑った恵に俺も泰も周りの皆も何も言えなくなった。 「むぅー!!恵くんのキチク!!」 悪いが。 生まれて初めてだけど俺も泰に共感だ! まぁ恵が、本当にそんな事するなんて思わないけど……。 …本当にしないよな? --*--*--*--*--*-- 恵くんって意外にお茶目?な事しそうな感じがします。 でも、いっつも無表情だから、皆からは本気で取られちゃう。