撫子から今日は何の日かを教えられても泰はぐずっとしていた。
やはり嘘とはいえ、相当ショックだった様で。

「泰、今日はエイプリールフールなんだって!な!?大丈夫だって」
「何が大丈夫なんですか上王先輩。意味不明ですって。まぁ留学生はその内帰ってきますよ」
「そうですよ!ね?泰先輩。元気出してください」

瞑・撫子・沙百合はそれぞれ泰を慰める。
そんな中恵ただ一人は一旦書類を書く手を止め、龍之介に言われたように生徒会室のカレンダーを4月に変えていた。

実は恵は最初から今日がエイプリールフールだと知っていた。
それは何枚も今日の日付を春休みの朝から書いているからである。
嫌でも今日がなんだかわかってしまう。
龍之介が部屋を出て行ったのも理由がわかったので実を追っていたんだろうと思っている。
実際その考えは当たっていた。

その時、控えめに生徒会室のドアが開かれる。
瞑・沙百合・撫子、そして泰がその先を見てみると、

「とーるちゃぁぁぁぁぁん!!」

泰を見つけた半泣き状態の実が泰に向かって走ってきて抱きつく。

「ご、ごめんなさぁい!ぼく、とーるちゃんのこと嫌いじゃないよ!」

ぎゅっと抱きつき泣きながら泰に謝罪する実。

「よ…よかったぁー……!」

泰もそれを聞いて安心したのか泰まで泣き出す。
3人はあっけにとられていたが、ほっと一安心で二人を見つめていた。
その後に龍之介が部屋の中に入ってくる。後ろには事情を説明された柊もいた。

「仲直りできましたか?」
「はい」
「よかった」

龍之介が聞くと撫子は嬉しそうに返事をする。
それを聞いて龍之介も柊も安心していた。

「本当にごめんね、とーるちゃん」
「むぅー……あんな事言った実くんはぁ」
「にゅ?」

その時、生徒会室の時計が鳴る。12時を知らせる音だった。

「僕、大嫌いだよぉ」

一瞬実がえ?という顔をしたが、「嘘だよ、今日はエイプリールフールだもん!」と元気良く言う泰に全員が笑う。

あ、と恵の声がする。

「泰」

恵が泰を呼ぶ。

「なぁに?恵くん」
「お前、エイプリールの事、本当に知ってるか?」
「知ってるよぉ!4月1日は一つだけならずーっと嘘ついてもいい日なんだよね」

それを聞いて恵はため息をついた。
そのため息に龍之介も何故か苦笑している。

「エイプリールフールには時間が決まってるんだ」
「……え?」
「午前まで、なんですよ。嘘付いていいのは」

恵の説明に龍之介が付け足すと泰ははっとする。
さっき、12時を知らせる時計の音が聞こえた。
その後自分は実に……

「……とーるちゃん」

小さく実が呟く。その顔はうつむいていて良く見えない。

「ち、ちがうよ!ちがうの!」
「うわぁああああああああああああああん!!」

泰の声も空しく、生徒会室には実の泣き声が響いたのだった。


【終われ】