今日は撫子さんが、実さんが絵を描いている姿を拝見したいという事で一緒に来てみました。 生徒会室の端っこにキャンパスを置いて、彼はこれから途中まで描いた絵の続きをどのように絵を描こうか悩んでいる様子。 撫子さんはそれをニコニコしながら後ろで拝見なされています。 一瞬微笑ましい光景ですが、もうこの状態がかれこれ10分過ぎています。 いい加減、どうにかならないでしょうか…? 「ねぇ〜ねぇ〜ひめ〜」 「はい、なんですか?」 筆を置いて彼は撫子さんの方へ振り返りました。 「ここね〜もっとばーん!ってかんじに描きたいんだけどぉ〜何色をいれたらいいと思う〜??」 「そうですね…」 実さんの質問に真剣に撫子さんは答えようとしています。 全く貴女はどなたにでもお優しい人です。 ちなみに僕には、ばーん!という実さんの意見の前に絵のコンセプトすら判りません。 多分、撫子さんもこの絵が何が何なのか理解されて無いですね。 僕にはわかります。 それにしても、一体何がテーマなんでしょうか。 芸術センスは結構あると思っていましたが、まだまだ僕は勉強が必要なようです。 「迫力をつけるのなら、赤とかどうですか?」 「あ〜!それいいかも〜!ありがとう〜」 「いえ、お役に立ててよかったです」 二人の意見が一致したのかお互いに笑って、実さんはまた筆を手にとってパレットにローズレッドの絵の具を出し、その絵の具を筆に浸けて、またキャンパスに何か円を描き始めました。 本当に、微笑ましい光景です。 「これね〜「戦争と平和」がテーマで〜ここのふたりの恋人が離れ離れになっちゃう絵なんだぁ〜」 「そうなんですか」 「戦争はとっても、かなしいよね〜」 そう話しながらも、彼は描く手を止めない。 ちなみに一つ聞きたいんですが。 …この絵のどこに人物がいるんでしょう? 僕には全くわかりません。 二人は楽しく話しているのを僕はただ後ろで見て、聞いてるだけ。 暫くすると反対側から撫子さんが呼ばれる声がして、「少しだけ失礼しますね」と僕達にそう言って、声の方向へ行ってしまった。 僕は同じ場所で彼が描く絵をただずっとぼんやりと眺めていました。 彼の絵は色んな意味で凄いと思います。 しかし、ただ一つ言える事は、 「ねぇ〜じいやぁ〜、ここに〜しょばーん!って描きたいんだけど〜」 「しょばーん…ですか……」 僕には実さんの独特すぎる世界を理解できる日は遠いのかもしれません。