最初は私達2人きりだった。 皇城学園高等部生徒会執行部。 それは私が新しく作り直した組織だ。 私が入学した当初の執行部は、我が物の権力で生徒を制圧している最悪な組織だった。 全ては自分のままに思うがままに我がままに、その権力を使う。 それで何人もの生徒が泣いて、苦しんだのか嫌でも耳に入ってくる。 それに耐えられなくて、だから私は1年生ながらその執行部に啖呵を切ってやった。 無力な私は家の権力を使うしか方法がなかった。 自分の力じゃなくて、家の権力を使うだなんて一番酷いやり方だ。 でもそれしか方法がない私は一番醜いやり方で散々思いつく限り実力を行使し、 最終的に私は全校集会で満場一致でリコールを出し執行部を解散へと導いてやった。 その後の執行部の面々は学園に居辛くなり、一人、また一人と学園を去っていった。 ――この学園は生徒の自主性を重んじる。 高等部の運営も生徒に自由に任せている。 だから新たに学園を運営する組織が必要となり、私は全生徒からの支持を得て私が生徒会長として新生執行部を作り上げた。 でも私に賛同してくれる生徒はいえど、一緒に手伝ってくれる人は現れなかった。 啖呵を切った最初から一緒にいてくれた芥だけ、彼が副会長という形で二人だけの生徒会が始まった。 それからはもう目を回すほどの忙しさだった。 学業の傍ら毎日夜遅くまで二人で、生徒のための学園運営を考える。 校則という校則を徹底的に変えたし、生徒の為だと思うなら新しいイベントも何度も作り上げた。 季節はあっという間に過ぎていって私達は3年生になっていた。 それでも生徒会のメンバーは私達2人だけ。 正直この私でも限界が来ていたのかもしれない。 その時だった。 たまたま校舎を二人で巡回していたらある3人に私は視線が行った。 つねづね噂は聞いていた。 中等部からの上がり組の中でも有名な3人。 3人は幼等部からの所謂幼馴染。 一人は剣道で全国大会優勝を果たし勉学も申し分のない優等生で、 一人は成績は優秀なのに素行が人一倍悪くて女の噂が絶えない子で、 そして最後の一人はその二人に守られている、すばらしい頭脳を持つ学年トップの少女。 噂では彼女がクラスのイジメにあった際、二人がクラス全員自主退学まで追い込んだらしい。 それも相まってか、3人に近寄る人間は誰一人いない、と。 そんな3人を見つけた時、直感で思った。 私にはこの3人が必要だと。 だから私はすぐ3人に声をかけた。 優等生君は胡散臭そうな目で私を見るし、不良君は私をナンパしようとするし、少女はうつむいたまま無表情だった。 私はそんな少女の表情を見た瞬間、生徒会長命令で即日3人を生徒会執行部に任命させた。 3人は不思議と嫌がる素振りをさせなかった。多分3人一緒にいられるからだと思う。 そうして生徒会は2人から5人になった。 一緒に過ごしていくうちに、優等生君は会計のプロになり、不良君は私のパシリ担当になり、少女は笑って私に懐いてくれるようになった。 私はこの高校生活最後の一年間はとても幸せで楽しい生活だった。 それは芥も同じだと、後で教えてくれた事がある。 楽しい時間はあっという間に過ぎていって、季節はもうすぐ春。 私と芥は卒業する。 次の会長を誰にするか、それはすぐに決めた。 最初私に目線も合わせなかった少女を次の生徒会長にすると決めた。 この一年で彼女は別人のように変わった。 全てをさらけ出してくれた彼女は無垢で純粋で、きっとこの執行部を新しい道へと導いてくれるに違いないと思ったから。 私の意見に芥も賛成してくれて、最後の活動の日に、私は3人に伝えた。 彼女を次期会長、2人を副会長にし、彼女のサポートに当たって欲しいと。 卒業しちゃ嫌だと泣きじゃくる彼女を宥めながら私はゆっくり説いていく。 最後は頷いてくれて、ようやくその時私の仕事が終わったんだと肩の力が抜けたのを覚えている。 ――そして今。 大学部に入って暫くして様子を見に行くと、彼女は無事に新しいメンバーを集めていた。 少しばかり個性的過ぎるメンバーだけど彼女が選んだんだし、問題はないでしょう。 「どうしたの?千姫。物思いにふけて」 今までの事を思い出してボーっとしていた所を芥に声をかけられた。 「ん?別にぃー!ちょっと昔の事思い出しちゃっただけよ」 「そう」 「やっぱり私の目には狂いはなかったわね〜」 「うん、そうだね」 きっぱりと肯定してくれる彼に私は微笑んで、今目の前に映っている『彼女の執行部』を見つめていた。 ――願わくばあの時の私みたいに彼女も幸せになってくれますように。