何となくどんな反応するのか見てみたかったのよね。 「ねぇ庭師、こっち向いて?」 「?どうしたの?沙百合さん」 「ふふ…隙ありっ」 「え…っ?」 だから私は振り向き様の庭師にいきなりギュッと抱きついてみた。 「えっ、沙百合さん!?ちょっ……」 抱きついてるからどんな顔をしているのかはわからないけど普段聞かない切羽詰った声を出しているのを聞いて、しめしめとおもってしまう私がいて。 「たまにはいいじゃない、付き合ってるんだから」 と決めセリフの様に言ってみるとそれきり庭師の返事はなくなってしまった。 さて、ここから彼はどちらの行動をとるのだろう? ≪恥ずかしがって私を放す?≫ ≪それとも抱きしめ返す?≫ 後者は彼の性格上殆どと言っていい程無いんだろうと頭では判ってるけど選択肢に入れてしまうあたり、なんだかんだいって期待してるんだなぁとちょっと自己嫌悪に落ちいてしまった。 …それにしても、考えてる選択肢の行動が一向に訪れない。 どうしたんかしら?と顔を上げて庭師を見てみると… 「……」 「…ぁ……ぇっと……その……」 庭師が顔を真っ赤にして、振り向いた時のポーズのまま固まっていた。 「おやおや」 「乳繰り合いなら他所でやれ、緑川」 「柏木の顔真っ赤だぜ?真っ赤。妃やるぅ〜♪写メ撮ろ」 「柊くん、熱あるの?ひえぴた持ってくる?」 庭師の行動と、周りの先輩達からのガヤになんだか私の方が何か恥ずかしくなって自分から抱きついたのに思い切り突き飛ばしてしまったのはご愛嬌ってことで。 「はぁ…考えてもみない行動に私が驚いたわ…」 「はは…ごめん」 帰り道。 当たり前も当たり前だけど、あの後ナイト先輩にコッテコテに怒られてしまった。 そのことを思い出しながらため息をつく私は一緒に帰ってる庭師を置いて前に早足でズカズカと歩く。 「ていうか!ここは男ならもっとギュッと抱き返すのは普通でしょ!?」 立ち止まって後ろを振り返りビシっと庭師に人差し指を突きつけてみる。 庭師は何だかあの時からニコニコしっ放しで(いや、元々いつもニコニコしてるけど、何かそれ以上にってことで)私の話に返事をした。 「そうだね。……けど…」 「けど?」 「まさか沙百合さんから僕に抱きついてくれるだなんて思いもしなかったから、正直言って驚いちゃって」 「だっ…だからそれは、ちょっとアンタの行動が気になっただけで」 嬉しそうに「驚いた」だ何て言うからやっぱり恥ずかしくて私はまた先へとどんどん歩いていく。 「ねぇ、沙百合さん」 庭師が私を呼んだ。 「…何よ」 私が立ち止まって後ろを振り返って訝しそうに庭師を見ると、庭師が両手を広げて、 「次にもう一度抱きついてくれたら、今度はちゃんと抱きしめ返すよ?」 なんて言うから、私は思いっきり庭師にデコピンをしてやった。 「痛……」 「調子に乗らない!」 そう言って私はまた歩くのを再開する。 「そういうつもりで言ったんじゃないんだけどな」 苦笑しながらも、庭師は後ろを着いて来る。 「嘘、バレバレよ!…ったく、本当アンタって急に大胆になるって言うかなんて言うか…」 ぶつぶつと呟きながら歩いている私の今の顔は絶対に庭師には見せたくないからさっきよりもスピードを速めて歩く。 後ろから、待って、て言う声なんか聞こえないふり。 だって私は今、超絶に嬉しい顔をしているのだから。 絶対に見せてあげないんだから!