ちょうど12時なったと思ったら、私の携帯が鳴った。
こんな夜中に非常識だなって思いながらも、誰なんだろうと思って携帯を開いてメール画面を起動させたら、
普段ならこんな時間にメールなんかよこした事もないだろう人物からで。

珍しい。
そう思いながら文章を開いて見ると、
『お誕生日おめでとうございます』
そう表示されていた。

カレンダーを見てみると、日にちは変わったから今日は10月2日。

…あー、
私の誕生日だ。

寮に入ってからは家族とはあんまり会ってないから、誰からも祝われる事はないんだろうなとか思っていたから、自分の誕生日なんか忘れていた。

(というか、もう10月なのね。)
生徒会に入ってから毎日が楽しくて、デンジャラスな日々だったから時間が経つのは早いこと早いこと。

あぁ、そうそう。
返事を返してあげなくちゃ。
…何かもう寝ていそうな感じがするんだけど。

そういえば、寝る前に部屋のカギ閉めたか見ないと。
…昨日は姫だったから、今日は私が当番だったわ。
別に誰も夜中に来る事なんてないし、特別でも学校の寮なんだから確認しなくても良いと思うけど高橋先輩が何か口煩いのよね。
(本当、先輩って姫の何…?)

返信を返しつつカギを閉めに行こうと思って、携帯を持ちながら私は部屋を出る。
返事の内容だなんて一番シンプル。
(大体返事を返すだけでも珍しいんだからね!ありがたいと思って欲しいくらいだわ!!)
丁度、玄関についた時に文章を打ち終わって、私は彼にメールを送る。
メールも送った事ですし鍵でもかけましょうかね〜とか呟きながらカギに手を伸ばした瞬間、外から聞き慣れた音楽と、
「わっ」とか妙に慌てている…これも聞き慣れた声がして私は固まった。

まさか、こんな時間にメール送ってくるのも珍しいんだから、普段はとっくに寝ているはずの人物の声が聞こえるなんて、誰が思う??

私はカギをかける為に玄関に来たのに、そのカギを開ける。
そしてゆっくりとドアを開けると、そこには先ほどのメールを送ってきた人物だった。

「あ…こんばんは、沙百合さん」
「こんばんは。…どうしたの?こんな夜中に。珍しい」

そう言いながら彼を見ると、パジャマ姿で。
本当、珍しいと思った。
何か、急用なのか?とまで思ってしまう。

「いえ、さっきメール送ったんだけど…」
「うん、受け取った。ありがとう」
「いえ、一番最初に沙百合さんに言いたかったから」

ありがとうと言ったら、嬉しそうに笑う彼。
私がその笑顔に弱い事、彼は知ってるのかは解らないけど私の心は何か危険状態。
おまけにあんな事まで言うんだから、自分でも解るほどに、頭が沸騰しそうなほど赤くなっていく。
そんな私を見ても、彼は笑顔でいる。


「…っ!で!!!何の用で来たの!!?」
「えー…と」
「どもらないで、ちゃんと言いなさい!」
「……怒らないで聞いてくれる?」



「メールで送った後にやっぱり自分の口で伝えたいって思ったら、いてもたってもいられなくなって…来ちゃった」




そう言って、彼は今度は私の目の前で「お誕生日おめでとう」と言った。