+たまには私が教えてあげる+ 「ねぇホスト」 「んだよ?」 「アンタって本当泰ちゃんと触れ合う男…恵君以外ほぼ全員、嫉妬の対象にしてるじゃない?」 「はぁ…?俺様そんな醜い男じゃねぇーけど。バッカじゃねぇの?」 「ムカ!…ていうか無自覚ですか。どうでもいいけど」 「何、一人でブツブツ喋ってんだよ」 「べっつにー。いや、それで聞きたいんだけど」 「?あぁ」 「あの光景見ても、アンタ何にも思わないわけ?」 真夜が指さした先を瞑が見ると、そこには泰と実がぎゅーっと抱きしめあって笑っている姿で。 年齢も1つしか違わない二人だがその光景は異性同士とかそんなものではなく、幼い兄弟がスキンシップのようにしている姿にしか見えない。 現に瞑もずっとそんな感じに見ていて、別にそういう風に思った事は一度も無かった。 「別に。ありゃお子様達がじゃれてるだけだろ?」 「ちっちっち!甘い」 「…何勝ち誇った顔してんだよ」 さほど興味のなさそうな返事しかしなかった瞑の鼻先に真夜が人差し指をビシっと指す。 その異様なテンションに瞑は若干引き気味ながらも真夜に返事をした。 「実くんって成長期と声変わり迎えてないじゃない?珍しいよね」 「はぁ…まぁ」 まぁ、考えてみれば16にもなって小学生と変わらない身長と高い声は珍しいといっちゃあ珍しいな、と思うが、まぁそれは人それぞれだろうと思う。それを今話題にして何があるんだよ、と瞑は真夜に呆れかえってため息をついた。 「そこ!ため息してないで真剣に話を聞きなさいって。…たとえば一年後の彼を思い浮かべて見てよ」 「一年後の実?」 「成長期が一気に来るタイプだと思うし半分は外国人だから、結構伸びるかもよ?身長」 「それが?」 「今より頭一個二個分大きくなった実くんが泰ちゃんを抱きしめてる姿を想像してみなさいよ」 真夜に言われて、瞑は一年後の実を想像してみる。 それを今の二人の構図に当てはめてみると… 「……っ」 迂闊だった、と小さい声で呟く瞑の声を聞き逃す真夜ではない。 「さて、どうしますかい?泰ちゃんのナイト様??」 真夜が止めの一言を放つと、瞑は、 「ちょっお前ら離れろ!!」 一目散へ二人の元に向かい、二人を引き剥がし始めた。 「…何やってんだ?瞑は」 「ん?いーや。とうとう嫉妬の幅が増えちゃったみたい」 「……そうか」 ちょうどその時、用事で生徒会室を空けていた恵が帰ってくるなり見た光景に不思議そうな顔をしたが、真夜が簡単に説明しただけで状況を理解した様で何事も無いように自分の席に戻っていった。 真夜は真夜で必死すぎる形相の瞑を見ただけで笑いが堪えきれず、瞑に気づかれないように声を立てずに笑っていた。